経営虎の巻 第105回「経営理念の見直し」
経済環境が厳しくなる中、多くの企業が改革の必要性を感じ、様々な経営手法を取り入れています。
しかし現実には、ただ経営手法を導入するだけでは期待する成果を出すことは困難です。
改革の実現には、企業の風土(組織風土)が大きく影響するからです。
この組織風土を好ましいものとするためには、その企業の価値観を形成する主体である経営者が「あるべき姿」を社内外に示すことが重要になります。
それは、「経営理念」という形で明文化されることで、内外に周知されていきます。
経営理念を構築する場合の要点は、以下の通りです。
「経営者の経営の有るべき姿に対する考えや価値観、信条が掲載されている」
「経営の方向性が明示されている」
「顧客や利害関係者重視の姿勢が明確になっている」
「具体的な行動基準やコンプライアンス重視の姿勢などが掲載されている」
次に必要なことは、経営理念に基づく行動基準の策定になります。
この行動基準では顧客、消費者などの組織外の利害関係者の信頼を得るために「従業員が理解でき、対応できるもの」になっていること、「このように判断する、このようなことはしてはならない」というように、できるだけ具体的に表現されていることがポイントです。
経営理念や行動規範が策定されたら、次は浸透活動です。
浸透活動と言っても、言葉だけを暗記しても、本当の意味での浸透にはなりません。
そもそも経営理念は問題が発生した場合に、その判断のために立ち返る基準でもあります。
経営理念を浸透させるということは、社内で問題が発生し、その判断を求められる場合でも、経営者と同様の判断が行えるようにするという意味があります。
この経営理念をその判断基準まで含めて浸透させるための方法として「過去の苦情対処、問題対処にあたっての対応事例」や「経営理念に基づき、どう判断するかといったケーススタディの作成」などが効果的です。
これらを社員に配布するとともに、朝礼や教育研修などを通じて周知徹底を図ることが必要です。
またせっかく定めた経営理念や行動基準も守られなければ意味がありません。
ルールの中で守るべきポイントを定め、定期的にポイントを監視するために運用監視体制などを確立することも重要です。
一度、原点に立ち返って経営理念や自社の組織風土を見直してみるのも大切なことではないでしょうか。