Q&A事例「Q.就業場所間の通災か 家業を終業後手伝う/Q.いじめの労災認定は?」
Q.就業場所間の通災か 家業を終業後手伝う
当社では兼業を許可制にしています。社員から家業(自宅と別の店舗)を手伝いたいという申出がありました。
終業後に、移動中の事故は通勤災害といえるのでしょうか。
A.就業の場所から他の就業の場所への移動も、通勤の範囲に含まれています(労災法7条2項2号)。
当該移動の間に起こった災害に関する保険給付は、「終点たる事業場」の保険関係で行う(労災則18条の5第2項、平18・3・31基発0331042号)としています。
よって、終業後にアルバイト先へ向かうようなケースであれば、アルバイト先の保険関係で処理することになります。
ただし、家業が同居の親族のみを使用する場合、「労働者」には当たらない可能性があり、労災保険でも、同様に解されます(労災法コンメンタール)。
Q.いじめの労災認定は?同僚間でパワハラなし
同僚からいじめを受けていると相談を受けました。
上司等からのパワハラは労災認定の対象になると思いますが、同僚の場合、どうなのでしょうか。
会社として、対応する義務があるのでしょうか。
A.問題の言動を行ったのが、同僚や部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験等を有している者であれば、「優越的な関係を背景とした」言動としてパワハラになり得ます(令2・1・15厚労省告示5号)。
また、パワハラに当たらなくても、同僚等からのひどいいじめ、嫌がらせは、従前から労災認定の対象とされています。
業務上の疾病というためには、業務による「強い」心理的負荷があることが要件です。
従来、「強」と認定されるには、ひどいいじめ等が執拗に行われたことなどが条件とされていました。
しかし、令和2年6月1日以降の認定基準(令2・5・29基発0529第1号)では、心理的負荷が「中」程度のいじめ・嫌がらせが「反復・継続していない」場合でも、会社が相談に適切な対応をしないときには、「強」に修正して労災認定するとしています。
会社として、相談を受けたにもかかわらず、放置しておくことは賢明とは言えないでしょう。